糸賀一雄記念賞・記念未来賞授賞式

平成30年11月1日(木) 糸賀一雄記念賞・記念未来賞の授与式に、シュウサク母ちゃん、とくとく爺、はるの3人で、滋賀県の琵琶湖ホールまで行ってきました(^^)

 

 新幹線と在来線を乗り継いでちょっとした旅行気分の副代表二人に対し、授賞式で記念スピーチをする代表シュウサク母ちゃんは一人緊張…。

 

 

 

 

 琵琶湖ホールに着き、この度一緒に受賞された方々や糸賀一雄記念財団の方々と控え室にてご挨拶させていただき授賞式へ、授賞式の中で、糸賀一雄記念財団の辻哲夫理事長さんから、「人と人がつながる、つなげるネットワークが大切であり、本日受賞されたみなさまはいずれも、糸賀思想を体現して取り組んでおられ、ぜひとも語り部になってほしい」とお話しいただき、改めていただいた賞の重みを感じました。

 

 

 

 

 記念スピーチは、みつばさん作成のパワーポイントとシュウサク母ちゃんのスピーチで『ここすまネットの活動』を紹介し、財団の方々からお褒めの言葉をいただき、光栄に思いました。

 

 

☆*:.。. 授賞式でもその後のレセプションでも、たくさんの素敵なご縁をいただき、大変貴重な経験をさせていただきました。

 この賞は、これまでここすまネットに関わってくださった方々すべてのおかげだと感謝しております。

 いただいた賞に恥じないように気を引きめて、気持ちを新たにとも思いますが、基本を忘れず、これからも今まで通り、こここすまネットらしく皆が笑顔になり、素敵なご縁で繋がる事を大切に、またこの度いただいた貴重なご縁をさらに深め、次につなげられるような活動をしていきます。今後とも変わらずご支援よろしくお願いいたします。 .。.:*☆

 

第4回糸賀一雄記念未来賞 授賞式スピーチ

 只今、ご紹介に与りました広島から参りました「ここすまネット」代表の中川 史と申します。

 まず、はじめに、糸賀一雄記念財団の関係者の皆様、日頃より障害福祉へのご支援を賜り感謝申し上げます。また、この度、糸賀一雄記念未来賞をいただき大変光栄に存じており、そして、今日もこのような貴重な機会を与えていただきまして、感謝の気持ちと緊張の思いが入り混じっております。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 保護者である私たちは、たまたま重度の障害がある子を授かりました。これまでそれぞれの家族が歩んできた道のりは決して平坦な道のりとは言えません。しかし、わが子の頑張りや笑顔に励まされ導かれ、命の尊さはもちろんのこと、感謝の気持ちや生きていく上で大切な気づきをいろいろ与えられ、良いご縁にも恵まれて心豊かに過ごすことが出来ています。

 

 また、活動メンバーの息子たちは、広島市療育センターの通園施設や特別支援学校に通い、発達に応じた指導を受け、様々な経験を積み重ねることができました。そのおかげで息子たちの今日があります。そして、天国にいる子どもたちも、素敵な家族とご縁に囲まれ続けています。

 

 私の息子は、二十歳前後の2年間で200日も入院生活を送り大変な時期もありましたが、現在28歳になり、日頃支えてくださる皆さんとこれまでの経験の積み重ねのおかげで、親から離れた生活を望むようになっています。先輩保護者から「どんなに重い障害があっても親から離れたがる時が来る」と聞いておりましたが、その通りだと実感しているところです。二男を元気に産んでやれなかった自責の念を長年持ち続けていた私も今では、「修作は優しい人ばっかりに囲まれて幸せじゃねぇ」が口癖のようになっています。

 

 そして、たとえ重い障害があってもみんなそれぞれの輝きがあって、障害がなくてもあっても、子ども達は皆、社会の宝だと実感しています。

 

 そのような経験から、子も親も一度きりの人生を心豊かに過ごして欲しい。たとえ重度の障害がある子を授かったとしても、母親がこの子を産んでよかった。家族の皆がこの子と家族で良かったと思えるようであってほしい。そう思える社会であってほしい。と思う気持ちから、ここすまネットは生まれました。

 

 ここすまネットは、こころスマイルネットワークの略で、ホームページ開設の際に親しみやすい名称に改めました。「ここすま」は「心でスマイル」の意味で、『重度の障害があっても心から笑えるように、周りの皆も作り笑いでなく心から笑えるように』という願いが込められています。

 ここすまネットの発足の元々のきっかけは、二男が通うデイサービスの誰も引き受け手が無かった家族会会長を引き受けたことでした。そのことが、新たに広島市4デイサービスセンター家族会の発足へと繋がり、その活動を通して「ここすまネット」の発足へと繋がりました。使命感とか責任感とかではなく感謝の気持ちから家族会役員をお引き受けしたことが、このような現在に至るとは想像もつかないことでした。今こうして、活動メンバーとたくさんのご縁に囲まれ、私達ならではのネットワークが広まり、とても有難く幸せに思っています。

 

 ここで、ここすまネットの活動について、ご紹介させていただきたいと思います。

 ここすまネットは、随時保護者のフォローや障害児者に関連することに出来る限りの協力をしながら地道にコツコツと活動を続けていますが、主な活動が三つあります。

 

 一つ目は、福祉と医療の連携を目的とした「情報交換会」「意見交換会」等の開催です。

 「福祉と医療の連携は協議会で話すだけでは進まないし、試しに、二男が日頃お世話になっている皆さんに集まっていただいてみよう!」と始めた会など、ここすまネットが主催するいくつかの会の参加者が回を重ねるごとに増えていきました。

 

 今年の2月に、ホームページ開設を記念して開催した「ここすまネット記念交流会」には、20代から80代の幅広い年齢の福祉医療関係者、そして、行政と議会も含めた多職種の皆様方が104名お集まりくださいました。交流タイムを設けて名刺交換をしていただき、新たな連携や交流も深まり、笑顔の輪も広がりました。

 このように、ここすまネットは、様々な人や団体をつなぐ触媒のような役割を担う、関係づくりとしての特色を持っています。そして、それらのご縁は無理やりつなげたものではなく、自然の流れのままにつながったものです。

 

 二つ目は、ホームページの運営です。

 昨年の秋に、新たなweb担当の活動メンバーを迎え、企画委員の協力の下、ホームページを開設しました。保護者だけでなく重症心身障害児者に関わってくださる皆様に情報を発信しています。一人でも多くの方に障害福祉医療に関心を持っていただきたいという願いも込めて取り組んでいます。

 

 web担当の後輩保護者のおかげで、とても柔らかな雰囲気のホームページになっています。「専門家コラム」「施設紹介」「遊びのとびら」「ちょっと見てみんちゃい」「イベント情報」「各種相談窓口」「活動報告」を掲載しています。広島市とも連携しており、ボランティアでご寄稿くださる皆様のおかげで、毎月1日と15日に更新しています。

 ローカルのホームページにしては、たくさんの方が見てくださっているようで嬉しく思っています。kokosuma.comひらがなでここすま、カタカナでネットと入力していただいても検索できますので、是非一度ご覧いただけたらと思います。バナー広告募集中です。

 

 三つ目は、行政への要望活動です。これまでに実現したものが三つあります。

 最初の取り組みは、ここすまネットの発足に繋がった取り組みでもあり、「重症心身障害児者の入院時の付き添い軽減」についてです。

 長期間病院で寝起きしながら付き添いをする母親と離れて暮らす障害児の兄弟への影響の大きさを感じ、行政と議会に付き添いの軽減を要望し、公立病院において病室の設備改善、保育士や看護補助員の増員によって付き添いが軽減されました。

 その取り組みの際に市議会議員・行政職員と共に訪れた厚生労働省と神奈川県立こども医療センターでの情報は、付き添いの軽減だけでなく、次の取り組みのメディカルショートステイの設置にも活かされました。

 

 「メディカルショートステイの設置」の取り組みでは、広島市の予算で広島市立舟入市民病院の病床を2床確保する形で、広島市重症心身障害児者医療短期型入所事業が開始されました。医療的ケアを必要とする児・者のショートステイの不足と、人工呼吸器をつけた児・者のショートステイ先が広島市内になかったため要望し、要望から設置までの2年間、医師と行政と病院機構のパイプ役を務め、設置後もこの事業が順調であるように出来る限りの協力をしています。

 現在では利用率が90%を超え、保育とリハビリテーションも受けることができます。8月にご視察くださったびわこ学園の口分田先生が、行政と病院職員の取り組みに感銘を受けてくださいました。

 

 それから、「重症心身障害児者の相談窓口の設置」にも取り組みました。医療と福祉の両方の専門性がある相談窓口がなかったので要望と情報提供をし、広島市の委託事業として重症児者施設を運営する社会福祉法人に設置されました。設置後も、当事者家族によるピアカウンセリングの協力とミニ療育の担当もしています。

 

 これらの行政への要望は、権利主張するといったようなことではなく、常に感謝の気持ちを伝え、重症心身障害児者と家族の置かれている状況を協議会やシンポジウムなどでも伝えながら、行政や議会の皆様にご理解いただいた上で、情報を共有化しながら実現してきました。

 

 そして、この度、このようなここすまネットの活動を評価していただいたことは、今後の活動の励みになります。

 この受賞をきっかけに、全国で同じような思いで活動されている皆さんとネットワークを広め、情報を共有しながら、今後も活動していきたいと思います。今後ともどうぞここすまネットをよろしくお願いいたします。

 

 最後に、「ここすまネット記念交流会」の様子を広島の地方紙「中国新聞」のコラム「天風録」で取り上げていただきましたので、ご紹介させていただきたいと思います。

 

 『ここのところ急に春めいて、日中はコートが要らないぐらい。イソップ童話でも、北風でなく太陽が旅人の上着を脱がせたように、あたたかさの力は大きい。そんな太陽みたいなグループがある。広島市を拠点に重度の身体障害者や家族を支える「ここすまネット」。まだまだ不便の多い重度の人が暮らす環境を少しでも豊かにしようと、関係者同士のつながりを深めてきた。なぜ社会はこうも冷たいのかと、役所を責めたりはしない。前を向く方向をみんなで考える。ホームページの開設を祝う今月の交流会には医師や施設の職員ら100人以上が集まった。福祉の担当を離れた公務員たちも仕事帰りにやってきてわいわい。活動6年目。脳性まひの二男修作さんを育ててきた代表の中川史さんらの笑顔と「ありがとう」に引き寄せられるように、輪は広まったのだろう。みんなができることを積み重ね、制度も一歩ずつ進んできた。「ここすま」は、「心でスマイル」の意味だそうだ。感情を顔に出せない重度の人も心の中で喜べるように。そのために周りの人も作り笑いという「上着」を脱げるように。ぽかぽか温かいつながりは、きっと社会を照らしてくれる。』

 

 このように、ご紹介いただきました。

 

 本日は、ご清聴ありがとうございました。

 ご来場の皆様のお健やかな毎日を祈念し、ご挨拶とさせていただきます。