【連載 ばぁばみちこコラム】第八回 こどもの事故― 熱中症―
熱中症は防ぐことができ、応急処置を知っていれば命を救うことができます。
もうすぐ、暑い夏がやってきますね。体温の調節が十分でない子ども達は、大人よりも熱中症にかかりやすく、より一層の予防対策が必要です。
体温は、皮膚の表面から空気中へ熱を放出することと、汗が蒸発するときに皮膚から熱を奪うことによって調節されています。
体温調節における子どもの特徴
熱の産生量は体重に比例し、熱の空気中への放出量は体表面積に比例します。子どもの体表面積は、体重比では大人より広いため、子どもは熱の産生量にくらべて多くの熱を放出することができます。体表面積が広い子どもは、気温が体温よりも低ければ、皮膚から空気中へ熱が移りやすく、体温の上昇を予防するのに有利です。しかし、気温が体温より高くなる夏には、空気中への熱の放出が難しくなり、体温調節は発汗だけに頼ることになります。大人より汗をかく量が少ない子どもでは、体温を上手にコントロールすることができません。また、真夏日によくあるように、気温が高いばかりでなく、湿度が75%以上になると、汗をかいてもほとんど蒸発しなくなるため、発汗による体温調節はさらに難しくなってしまいます。
また、気温は高さによって異なり、地面に近いほど気温が高く、輻射熱の影響もあり、身長の低い幼児では大人に比べて気温が2~3℃高くなります。乳幼児は自分で十分な意思表示ができないので注意が重要です(表1)。
熱中症とは?
暑い環境の中で起こるさまざまな障害のことを熱中症と呼んでいます。人間は暑いときは、汗を出すことで体内の熱を外に放出して体温が上昇しすぎるのを防いでいますが、体内での水分や塩分が足りなくなると、体は脱水状態に陥り、発汗による体温調節ができなくなります。また、脳への血液が減少し、めまいや意識障害を起し、最悪の場合には死に至ります。
熱中症の症状
子どもが真っ赤な顔をして、いくら拭いても汗がでる、またはまったく汗をかいていないなど、汗のかきかたがおかしい場合は熱中症のサインです。熱中症のサインに気がついたら、症状を悪化させないためにも、こまめな水分補給・塩分補給を行うことが重要です。
筋肉の痛みや筋肉のけいれん、手足の筋肉がつる、めまいやたちくらみがみられることもあります。体温が高い、皮膚を触ると熱くてぐったりして力が入らない。吐き気や嘔吐、頭痛、呼びかけに反応しないなどの症状が見られたら応急処置を行うとともに医療機関を受診しましょう。
子どもの熱中症を予防するには?
- 時間を決めて、多めに水分や子ども用のスポーツドリンクを飲ませましょう。
- 熱のこもらない素材や薄い色の衣服、日光を遮る帽子などを身につけ日差しから守りましょう。
子ども用の冷却グッズなどで首回りなどを冷やすと、効率よく体を冷やすことができます。 - ベビーカーなど大人よりも地面に近い環境で過ごすことが多いので地面の熱に注意しましょう。
- 暑い環境、特に短時間でも車内に置き去りにすることは絶対にやめましょう。
- 室内あそびでも、扇風機やエアコンで室温を適度に下げましょう。
- 汗や体温、顔色や泣き方など、子どもの様子を、まわりの大人が気にかけましょう。
- 子どもや特に乳幼児が遊びに夢中な場合には、大人が見守り休憩や水分補給をすすめましょう。
【暑さ指数 WBGT:Wet Bulb Globe Temperature】を活用しよう
熱中症を予防することを目的として提案された指数が暑さ指数です。
①湿度、②日射・輻射などまわりの熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標で、環境省の熱中症予防情報サイト(http://www.wbgt.env.go.jp)で、4月20日から公開されています。
主要都市の救急搬送データをもとに日最高暑さ指数と熱中症患者発生率を見てみると、暑さ指数が厳重警戒の28℃を超えると熱中症患者が著しく増加しているのがわかります(表2)。
【車内への子どもの置き去りに注意!!!】
毎年、夏が近くなると、駐車中の車内に子どもを放置し、子どもが熱中症でなくなってしまうという悲しい事故が多発しています。車の中の温度は気温がほとんど変わらなくても、短時間で急上昇します(表3)。特に真夏は5分程度でも危険です。 駐車場は風通しが悪く 窓を開けても温度はあがります。子どもを載せている後部座席は特に要注意で、ほんの少しの時間であっても「車内に子どもを置き去りにする」のは絶対にやめましょう。子どもは暑い車内に耐えることはできません。
もし熱中症かなと思ったら?
- まずはクーラーが効いた室内や車内など涼しい場所へ移動しましょう。屋外で、近くにそのような場所がない場合には、風通りのよい日かげに移動し安静にしましょう。
- 衣服をゆるめて、体の熱を放出し、体温を下げましょう。氷枕や保冷剤で両側の首筋やわき、足の付け根などを冷やします。体に水をかけて、あおぐことでも冷やすことができます。
- 塩分や水分、できればスポーツドリンクなどを補給しましょう。おう吐や意識がないなどの症状がみられた場合には、誤飲の危険性があるので、むりやり水分を飲ませることはやめましょう。
さいごに
子どもが遊びに熱中している時は、タイマーやベルなど子どもの大好きな音で休憩タイムを促しましょう。外に出かける時には、日光を遮る帽子、水筒、保冷グッズなど熱中症対策を忘れないように。楽しい夏をお子さんと一緒に安全に楽しんでくださいね。
ではまた。 By ばぁばみちこ