【連載 ばぁばみちこコラム】第九回 こどもの事故―虫刺され―
子どもの皮膚は薄く、とても敏感です。夏が近づき、気温が高くなり、虫が活発に活動するようになると、虫刺されに注意が必要です。
子どもの虫刺され
虫刺されによる一般的な症状はかゆみと腫れですが、子どもは大人よりも腫れがひどく、1週間経っても腫れがひかなかったり、水ぶくれになったりします。
大人は何度も虫に刺されているので、ほとんどの人がアレルギーに対する抗体を持っています。そのため、虫に刺されるとすぐにかゆくなりますが、腫れることは少なく、数時間後には自然に治まります。一方、子どもは、虫に刺された経験が少なく、アレルギーに対する反応がゆっくりで、数時間以上たってから腫れてきます。皮膚が薄いまぶたなどは特に腫れやすく、普通の虫刺されでも「お岩さん」のようになることもあります。また、アレルギー反応がひどくなると発熱することもあります。
夏場には虫刺されから「とびひ」になることが多くなります。「とびひ」は、皮膚に常在しているブドウ球菌という細菌が、引っ掻いた傷口に感染して起こります。夏は汗によって皮膚はほどよい湿度があり、菌が増殖するのに適した環境になっているためです。また、引っ掻きすぎによって皮膚が豆粒くらいの大きさに硬く盛り上がる「痒疹結節」や、色素沈着がおこり、引っ掻いた跡が黒ずんでしまうことがあります。
この季節に注意が必要な虫
蚊
ヒトスジシマカやコガタアカイエカなどの種類があり、コガタアカイエカは日本脳炎の原因になります。
ブヨ
ハエに似ており、高原や谷などに多く生息しています。刺されて半日くらいしてから赤い発疹があらわれ、だんだんかゆみが強くなります。人によっては赤いしこりとなって残ることもあります。
ノミ
ネコノミによるものがほとんどで、刺されて1~2日後に赤い発疹と強いかゆみがあらわれ、水ぶくれができることもあります。
ダニ
ほとんどがイエダニで、布団の中に入り込み、寝ている時にわき腹や太ももなどのやわらかい皮膚が刺されることが多く、半日~1日くらいたって赤い発疹と強いかゆみがあらわれます。
郊外で刺されることの多いマダニは、無理に取ろうとすると、頭が皮膚に残ってしまいます。かゆくないため2~3日気がつかないこともあるので注意が必要です。小さいイボのようなものがなかなか取れない場合はダニの可能性もあり、切開しないと除去できないので受診が必要です。
ハチ
多くはアシナガバチやスズメバチによるもので、刺されると強い痛みを感じ、皮膚が赤く腫れ、かゆみを感じます。何度も刺されると、アナフィラキシーショックを起こす可能性があり、刺されて30分~1時間で血圧低下や意識消失などの症状が起こった場合にはすぐに受診が必要です。
ムカデ
咬まれると激痛としびれが生じ、だんだん赤く腫れてきます。人によってはハチと同じようなショック症状を起こすこともあります。ムカデは毒を持ち、その毒には溶血性毒やヒスタミン様物質が含まれるため、咬まれた箇所は炎症を引き起こします。ムカデに刺されたら受診が必要です。
ケムシ
有毒の毛をもっているのはごく一部の毛虫(チョウやガの幼虫)です。毒のある毛虫に触れると、赤い小さな発疹がたくさんあらわれ、激しいかゆみをともない、掻くと広がっていきます。庭木の手入れなどで、ケムシにふれると、首や腕に集中してあらわれることがよくあります。イラガというガの仲間の幼虫の場合は、触れた瞬間ピリピリとした痛みと発疹が生じ、1~2時間でいったん治まるものの翌日赤く腫れてかゆくなることがあります。
虫刺されを予防するには?
- 草や木が多い野外に出かける場合には、長そで、長ズボンを着用し、肌の露出を 避けましょう。
- 家の周りのよどんだ水たまりなどをなくし、虫の発生を予防しましょう。
- 室内に生息するダニやノミなどは湿気を好むので、換気、清掃を行いましょう。
- 虫よけのスプレーなどを使いましょう。
<虫よけについて>
虫よけには直接肌に付けるスプレーやクリームタイプ、洋服に貼り付けるシールタイプ、腕に付けるリングタイプなどさまざまな種類があります。
虫よけには「ディート」と呼ばれる蚊やダニなどの虫の忌避剤の成分が含まれています。忌避成分は一般的には毒性が低いとされていますが、子どもは使用回数制限を守って使用することが必要です。また、子どもが直接成分を吸い込まないよう注意しましょう。
ディートの副作用が気になる場合は、レモンユーカリオイルや、ハッカ油、ゼラニウム、レモングラス、ローズマリー、ラベンダーなどの虫よけに効果のあるアロマオイルを使って手作りのスプレーを作ることもできます。
日焼け止めと虫よけを併用する場合には最初に日焼け止めを、その後に虫よけをする必要があります。虫よけは揮発成分のため、虫よけの上に、日焼け止めなどのクリームを塗ると、効果がなくなってしまいます。
虫に刺されたら?
虫に刺された部分を洗い流して清潔にし、冷やして、できるだけ掻かずに、炎症を広げないようにすることが大切です。
虫刺されに使われる塗り薬には、かゆみを鎮める抗ヒスタミン成分を配合した外用剤(抗ヒスタミン剤)と、炎症を抑えるステロイド外用剤があります。
蚊などにさされて、かゆみだけで症状が軽い場合は、外用抗ヒスタミン製剤で様子をみることができますが、ハチや毛虫の場などでは、できるだけ早くステロイド外用剤を使って炎症を抑える方が安心です。外用の抗ヒスタミン製剤はかゆみを軽減することはできますが、かゆみの原因となっている炎症を抑えることはできません。炎症が悪化すれば、腫れやかゆみが増し、引っ掻くことによってさらに炎症が悪化してしまいます。
虫刺されでも症状が強い場合は、内服薬の抗ヒスタミン剤やステロイド剤による治療が必要なこともありますので、腫れがひどいときや、熱が出た場合には病院を受診しましょう。
最後に
子どもの皮膚はとてもデリケートです。大したことがないと思って放っておくと、引っ掻いて傷跡が残ることがあります。夏のお出かけには虫さされに対する予防も忘れないで下さいね。
ではまた。 By ばぁばみちこ