【連載 ばぁばみちこコラム】第十二回 冬に流行する感染症―インフルエンザ―
気温が下がり、空気が乾燥する秋から冬にかけてはインフルエンザ、RSウイルス、ロタウイルスなどの感染症に注意が必要です。
インフルエンザとは?
インフルエンザはインフルエンザウイルスによって起こる病気で、伝染力が非常に強く、集団生活の中で広く流行します。子どもは重症化しやすく、肺炎や脳症などの合併症を引き起こして死に至ることもあり、普通のかぜとは区別すべき病気です。
インフルエンザとかぜの違い
インフルエンザは通常のかぜと違って、突然の高い熱で発症し、倦怠感や関節痛など全身症状が強いのが特徴です。
インフルエンザ | かぜ | |
---|---|---|
発病 | 急激 | 比較的ゆっくり |
症状の部位 | 強い倦怠感など全身的 | のどや鼻など局所 |
発熱 | 高い、しばしば39~40℃ | あっても37~38℃ |
悪寒 | 強い | 軽い |
からだの痛み | 強い | なし |
重症感 | あり | なし |
鼻炎・咽頭炎 | 全身症状に付随 | 先行しておこり、特徴的 |
インフルエンザウイルスの種類とインフルエンザの流行
インフルエンザウイルスには、A、B、Cの3つの型があります。毎年流行を引き起こすのはA型とB型で、その中でもA型は大流行を引き起こします。
インフルエンザウイルスは毎年少しずつ構造が変化(変異といいます)し、世界中で流行しています。これが「季節性インフルエンザ」です。
一方、インフルエンザウイルスが全く違う型に変化することがあります。この変化は10~40年に一度起きる変異で、「新型インフルエンザ」と呼ばれるものです。新型インフルエンザの発生を予測することは困難ですが、多くの人が免疫を持っていないため、発生すれば大きな影響を与えます。
過去の新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)の歴史
20世紀に入って流行した新型インフルエンザは、スペインインフルエンザ、アジアインフルエンザ、香港インフルエンザで、その度に多くの人が感染し、死者が出ました(図)。
2009年に流行した新型インフルエンザA(H1N1)は、日本での推計患者数は2000万人と、この20年間で最大の流行となり、一部の人で重症化しました。その後免疫を持つ人が増え、2010年には流行が終り、2011年4月からは通常の季節性インフルエンザとして取り扱われています。
インフルエンザの流行時期と感染経路
日本では、毎年11月下旬から12月上旬にインフルエンザのシーズンが始まり、1~3月にピークとなり、翌年4~5月には患者数は減少します。
インフルエンザウイルスは発病前日から発病後3~7日間程度は感染力を持っています。くしゃみや咳など(飛沫はおよそ2m飛ぶと言われています)によって感染が拡大し、子ども達が集団生活を送っている保育園や学校などで流行を起こします。
インフルエンザの予防対策1―インフルエンザワクチンの接種
現在国内で用いられているインフルエンザワクチンは、感染(ウイルスが体内に入ってくること)を完全に阻止することはできませんが、インフルエンザの発病をある程度抑えることや、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされています。
インフルエンザは毎年流行する型が異なるため、世界保健機関(WHO)がその年に流行する型を予測し、それに基づいて日本の研究機関でワクチンが製造されます。
現在国内で用いられているインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスA型株とB型株をそれぞれ2種類ずつ培養して作られる「4価ワクチン」です。
1.最適なワクチン接種時期
インフルエンザワクチンは、投与後効果があらわれるのに2~3週かかります。流行期に十分な効果を得るための最適な投与時期には10月下旬~11月中旬です。
2.子どもへのインフルエンザワクチン接種
生後6か月までは、お母さんからもらった免疫が残っており、インフルエンザにはかかりにくいといわれています。
大人は、過去にかかったインフルエンザによって、ある程度の免疫を持っているので、1度の接種で十分ですが、子どもは過去にインフルエンザにかかったことが少なく、6か月~13歳未満の子どもは予防効果を高めるためには2回のワクチン接種が必要です。
インフルエンザの予防対策2―日常生活での注意
子どもがインフルエンザにかかるのを予防するには、日常生活の中での注意も必要です。
風邪を引いた人との接触や人ごみを避け、外出時にはマスクをするとともに、手洗いや外出後のうがいを習慣づけることも大切であり、日ごろからバランスの良い食事と十分な休養をとることも欠かせません。
加湿の重要性―インフルエンザウイルスは高温多湿に弱い
冬場は気温が低く、空気が乾燥するため、インフルエンザウイルスが活発に活動します。インフルエンザウイルスは、寒さと乾燥が大好きなのです。また、のどや気管支が乾燥すると粘膜の防御力が低下するため、ウイルスに感染しやすくなります。
室内では、加湿器を使用したり、ぬれタオルを干すなど、湿度を50~60%程度に保つようにするとインフルエンザウイルスの生存率は低下します(図)。
インフルエンザの診断・検査
近年、A型とB型インフルエンザは迅速診断法が可能になり、15分程度で感染の診断ができるようになりました。細長い綿棒で鼻の奥をこすった拭い液で「迅速診断キット」と呼ばれる小さな検査器具を使って診断します。
発症後早い時期の検査ではウイルスの量が少ないために、感染していても陰性になる場合があり、発熱などの症状がみられて12時間以上経過して検査を行うことが大切です。発病してから48時間以内であれば保険適用も認められています。
インフルエンザの治療
抗インフルエンザ薬 現在主に使用されているのは以下の4種類です。
一般名 | 商品名 | 用法 | 注意点 |
---|---|---|---|
オセルタミビル | タミフル | 経口 | 腎臓から排泄されるため腎障害のある人には投与間隔を延長 |
ザナミビル | リレンザ | 吸入 | 添加物として乳糖がありアレルギーに注意、専用の吸入器が必要 |
ラニナミビル | イナビル | 吸入 | 専用の吸入器は不要、添加物として乳糖があり、アレルギーに注意 |
ペラミビル | ラピアクタ | 注射 | 経口、吸入のできない人に使用 |
どの薬もインフルエンザの症状があらわれて48時間以内に投与を開始する必要があります。5歳以下の子どもでは、吸入を行うのが難しいことが多く、吸入薬は適さないかもしれません。
副作用として、異常行動が指摘されています。4剤全てで報告されていますが、タミフルが最も多く、2007年以降10歳以上の未成年には原則使用しないこととなりましたが、因果関係が不明で、本年5月に使用が可能となっています。
小児や未成年では、発症後少なくとも2日間は子どもを一人にさせないことが必要だと思います。
インフルエンザの時のこどもへの解熱剤
アセトアミノフェン(カロナールやアンヒバ座薬)は使用できますが、アスピリンやロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬はインフルエンザの子どもの解熱には適していません。
特に、アスピリンは、ライ症候群という脳症を引き起こす可能性があるため、15歳以下の子供のインフルエンザで使用してはいけないことになっています。
さいごに
インフルエンザになったら「発症後(発熱後)5日を経過し、かつ熱が下がって2日を経過するまで」学校や保育園に通うことができません。
お仕事を持っているご両親は仕事を休むことが難しい場合も多いと思いますが、こんな時こそ心細いお子さんのそばにいることができるといいですね。
ではまた。 By ばぁばみちこ