アメニティーフォーラムin滋賀「医療的ケアを必要とする人への支援の最前線」を聴講して〜東松山市の取り組みを中心に〜
ここすまネットの企画委員を代表して、2月7日~9日の日程で行われた第24回アメニティーフォーラムに参加しました。
その中のセッションの1つ「医療的ケアを必要とする人への支援の最前線」の中で、埼玉県東松山市の取り組みについて講演がありました。東松山市では、共生社会の実現にむけて取り組んだ結果、障害児通園施設が閉園となり、地域の幼稚園・保育園で障害の有無に関わらず一緒に育っています。以下、簡単ではありますが、講演内容を紹介させていただきます。
埼玉県東松山市は、人口約9万人の市で、1998年の「第一次市民福祉プラン・ひがしまつやま」の策定以降、共生社会の実現にむけて取り組んできました。その一環として、2004年に障害児通園施設を閉園し、児童発達支援センターに障害をもつ子どもを集めないようにしました。また、2007年に就学支援委員会を廃止し、障害をもつ子どもと保護者の希望に基づいて就学先を決める仕組みを作りました。
これらの東松山市の取り組みは、2018年に策定された第1期障害児福祉計画の中で示された国の基本指針「児童発達支援センターを各市町村に少なくとも1カ所以上設置」と相反するものです。
では、東松山市は具体的にどのような取り組みをしているのでしょうか?
東松山市の取り組みの特徴は大きく2つありました。1つ目は、「就学支援シート」を基づいた引き継ぎ会、2つ目は、「巡回相談支援」です。
前提条件として、東松山市では、「第一次市民福祉プラン・ひがしまつやま」の策定以降、障害児通園施設の職員が地域の幼稚園・保育園に出向き、そこに通う障害をもった子どもと現場の職員を支援する取り組みを進めた結果、障害児通園施設に通う子どもが減少し、施設の閉園につながったそうです。
現在は、様々な障害を抱える子どもたちが、地域の幼稚園・保育園に通っています。子どもの対応方法やこれまでの関わりについて、幼稚園・保育園から小学校に伝える仕組みの1つとして「就学支援シート」が作成され、就学支援シートに基づいた引き継ぎ会が行われています。
巡回相談支援は、特別支援学校、医療期間、相談支援事業所、福祉課のメンバーで巡回支援チームを作成し、市内の小中学校を巡回する取り組みを実施しています。これにより、地域の支援者の顔がわかることで相談しやすい雰囲気が形成されたそうです。
東松山市では、重症心身障害児と呼ばれる子どもたちも、地域の幼稚園・保育園で過ごし、当たり前のように地域の小学校に就学するなど、地域の中で育っています。
それにより、
体調不良や入院により登校できない日が続くと、クラスメイトから「またお話をしようね」「教室で一緒に勉強しようね」というお手紙をもらうことや、
小学校の時の友人とは、高校生になっても(重い障害をもつ子どもの)家に集まってたこ焼きパーティーをする仲であり、「成人式はお迎えに来るからね!!」という会話もあるそうです。
東松山市の保護者の方は「全ての始まりは、保育園に入れたこと、保育園・小学校を地域で過ごせたこと」が現状につながっていると話をされているそうです。
東松山市の取り組みは、障害をもつ子どもに特化した施作によって「障害をもつ子どもを地域から隔離する」のではなく、「地域の中の子どもの一人として育てる」取り組みだと感じました。
また、私は、理学療法士として、障害をもつ子どもの早期発見・早期介入が大切なのではないかという考えを持っていましたが、演者の方からの、「専門家の名の下に障害をもつ子どもの未来を決定していないでしょうか?私たちは、占い師でも預言者でもありません」、「専門職が善意をもって子どもたちを分けてしまい、本人の社会参加を阻害していないでしょうか?」という言葉には、すごく考えさせられました。
参考資料
第5期障害福祉計画等に係る国の基本指針の見直しについて
平成30年11月7日 東松山市地域自立支援協議会全体会 資料1
http://www.city.higashimatsuyama.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/41/301107s1.pdf
ともに育つこどもたちのエピソード集
http://www.city.higashimatsuyama.lg.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/41/epsode.pdf