障害児施設の理念
4月から名誉病院長となり、最前線から退却しましたが、この十数年間鈴が峰で何を成し得たか、なにか自慢できることがあるかと自問したときに、どこまで達成できたか、疑問符付ですが、施設で働くスタッフの幸せをまず第一に考えて行動したと、大正解ではないにしても間違いではなかったと、答えることができると思っています。
まず、第一に考えるべきは、入所者の幸せ、次に保護者の幸せではないかと、反論されるでしょう。しかし、自分の考えでは、スタッフを幸せにすれば、何をしなくても必然的に入所者は幸せになります。
逆に、スタッフが不幸であれば、決して他人の面倒など気持ちよくは看れません。老年者施設を含めて多くの施設での虐待、あるいは最近話題になった多数の犠牲者を出した事件も、根本のところでスタッフが幸せでないから起こった事件とも考えています。虐待防止でいろいろな規則や罰則など制度をいくら整えても、虐待が繰り返されるのは、スタッフの幸福度を上げる施策が欠如しているからと推察しています。
自分が、鈴が峰に赴任して、半ば理事長と対立しながらも、スタッフの待遇改善、意識改革等に努めた結果、いつの間にか、呼吸器使用者20例、径管栄養60例に昇る多数の超重症児者を看ることができるようになり、最近は呼吸器使用者のショートステイも受け入れられるようになりました。スタッフの不平不満が満ち溢れていれば、ここまでの協力は得られなかったと思っています。
新しい病院長も同じ考えで施設を運営してくれるものと思いますので、ますます鈴が峰はいい施設になってくれるものと期待しています。