【連載ばぁばみちこコラム】第六十五回 妊娠中と出産後の訪問指導による支援
子育て世代包括支援センターは、妊娠や分娩、子育てに関連のある部署への連絡と調整を一括して行っています。センターでは子育てに関する様々な相談をすることができるだけでなく、保健師や助産師が支援の必要なお母さんの自宅を直接訪問して指導を行っています。
子育て世代包括支援センター=妊娠・分娩・子育てに関する連絡調整機関
子育て世代包括支援センターは平成29年(2017年)の児童福祉法と母子保健法の改正に伴って、同年4月から市区町村に設置することが努力義務となりました。
妊娠初期から子育て期のそれぞれの段階に応じた適切な支援の情報を提供したり、助言を行ったりすることがセンターの目的で、それまで保健所、子育て支援機関、児童相談所、都道府県など様々な関係機関で個別に対応していた相談を一括して行ってもらえます。
お母さんが妊娠すると、自分が住んでいる地区の各保健センターに妊娠の届けを行い、母子手帳を受けとります。妊娠中、お母さんは産婦人科で妊婦健診を受け、出産後に出生届と出生連絡票を提出すると、それらの書類は居住地区の保健センターで管理されます。
出生届と出産連絡票
「出生届」は赤ちゃんが産まれたことを役所に届ける書類です。出生当日も含め14日以内に出す必要があります。出生届の用紙は、産婦人科の病院や役所の戸籍係の窓口にあります。
右半分が分娩に立ち会った医師や助産師が記入する「出生証明書」で、左半分にご両親が記入する項目があり、記入した用紙は役所の戸籍係に提出します。
「出生連絡票」は母子健康手帳に入っているはがきです。低出生体重児を把握するのが一番の目的で、低出生体重児は母子保健法で、出生連絡票を保健センターに出すことが義務づけられています。
低出生体重児以外のお母さんは提出するかどうかは任意ですが、保健センターで管理され、乳幼児健診や予防接種等の通知、新生児訪問指導、乳児家庭全戸訪問のために用いられます。
必要事項を書いて投函するだけで、様々な支援につながりますので、出産後なるべく早いうちに、出生届とともに提出してくださいね。
妊産婦訪問指導とは?
妊産婦訪問指導は、すべての妊婦に行うものではなく、保健師などが必要と判断した妊婦に対して行われます。
妊婦が妊娠届を提出する時や母子健康手帳の発行を受ける時などに、保健師が妊婦と面談し、若すぎる妊娠や生育歴、経済的不安やパートナー・家庭の状況などから育児が難しいと思えるいわゆる特定妊婦(64回コラムを参照ください)や妊婦健診を受けていない妊婦などが対象です。
また、今までに妊娠高血圧症候群など妊娠や出産に問題があったお母さんや、未熟児やその他の異常のある赤ちゃんを出産したことのあるお母さんなども対象になります。
対象となった妊婦に対しては、必要な訪問指導回数を決め、継続的にその家庭を訪問し保健指導や生活指導が行われます。
訪問事業の実施主体は市区町村ですので、対象者はその市区町村に住民票がある妊婦で、訪問指導を行うのは主に保健師や助産師です。
妊産婦訪問指導の流れ
市区町村の保健センターなどで訪問指導に先立ち、妊婦訪問指導票と産婦訪問指導票を作成し、それに基づいて訪問を行います。訪問後、訪問を行った保健師や助産師は、お母さんとの訪問内容や問題点を指導票に記入し市町村に報告します。提出された訪問指導票の内容は新生児訪問指導などの際に支援の参考にされます。
また、訪問指導で疾病や何らかの問題点を発見した場合には医療機関やソーシャルワーカーなどと連携をとり対策を講じます。
「乳児家庭全戸訪問」と「新生児訪問指導」
赤ちゃんのことを相談する相手がそばにいなくて、育児に関する様々な疑問や不安を持ちながら子育てをしているお母さんもいらっしゃると思います。特に初めての子育ては戸惑うことが多く、身近にいる相談できる人はお母さんにとって力強い存在です。
自宅に保健師や助産師、母子保健推進員や児童委員などのスタッフが訪問し、育児に関する様々な相談に乗ってもらえる事業として「乳児家庭全戸訪問(こんにちは赤ちゃん事業)」と「新生児訪問指導」の2つの事業があります。
どちらも育児に関する様々な相談ができますが、乳児家庭全戸訪問が、その地域で生まれたすべての新生児・乳児を対象にしているのに対し、新生児訪問は基本的には全新生児が対象ではありません。赤ちゃんのいる家庭を訪問するという目的は同じであり、自治体によっては一つの事業として行っているところもあります。
乳児家庭全戸訪問(こんにちは赤ちゃん事業)=乳児のいる家庭と地域社会をつなぐ最初の機会
乳児家庭全戸訪問は、児童福祉法第に定められた事業で、生後4か月未満の赤ちゃんがいるすべての家庭を対象に訪問が行われます。乳児を育てている家庭の孤立を防ぎ、赤ちゃんを健全に育てることが目的です。出生連絡票をもとに自治体から案内が届きます。
訪問スタッフは、妊婦や子育て中のお母さんの相談に乗っている地域の愛育班員や母子保健推進員、子どもの安全を守る活動をしている児童委員など、地域で子育ての支援を行っている幅広い経験を持っている人達で、自治体に登録されています。
主に、育児に関する不安や悩みを聞き、乳児と家族の心身の様子や養育の環境を把握し、関係機関と連絡調整をしながら、必要なサービスにつなげるのが目的で、育児に必要な地域の情報や施設などの案内もしてもらえます。
新生児訪問指導
母子保健法第11条に定められた事業で、生後28日以内(里帰りの場合は60日以内)に保健師や助産師が家庭を訪問し指導を行う事業です。
母子健康手帳と一緒に配られる出生連絡票の内容や妊産婦訪問などの情報から訪問指導が必要と判断された場合に市町村から案内が送られてきます。特に、低出生体重児の赤ちゃんなど発育への相談指導が必要な場合が対象になります。
訪問指導の目的は赤ちゃんの発育や栄養、生活環境、病気の予防など、育児に必要なことについて指導することです。特に初めてのお子さんの場合、例えば、母乳の回数やあげ方、体重の増え方などの栄養や発育、予防接種の進め方などの育児に関することだけでなく、育児に関する様々な悩みも聞いてもらえます。
養育支援訪問事業
妊産婦訪問や出生連絡票、乳児家庭全戸訪問事業、新生児訪問指導などにより子育ての状況を把握し、継続した支援がさらに必要と認められたお母さんに行われているのが、養育支援訪問事業です。
育児支援を通じて母親の孤立を防ぎ、赤ちゃんの健やかな養育、虐待防止を目指しています。
対象となるのは、特定妊婦(望まない妊娠、若年の妊娠、妊婦健診を受けていないなど妊娠期からの継続的な支援が必要な妊婦)、育児ストレスや産後うつ状態等の問題によって子育てに対して強い不安や孤立感を抱えている妊婦等です。
保健師、助産師、看護師、保育士などの専門的スタッフによる相談や子育て経験者、ヘルパーなど育児家事援助も受けられます。
養育支援訪問の流れ
妊産婦訪問、乳児家庭全戸訪問事業、新生児訪問などの訪問結果は所定の報告書に記入され、市町村の担当部署に報告されます。
市町村担当部署は報告された結果をもとに支援の必要性のある家庭についてケース対応会議を開催し、支援の必要性とその後の支援内容等が決定されます。
ケース対応会議は、養育支援訪問事業の担当者、市町村の母子保健や児童福祉に関係する担当者が出席します。また、必要に応じて、要保護児童対策地域協議会(64回コラムを参照ください)や調整機関(以下「調整機関」という。)の職員などが参加して開催されます。
会議の結果、支援が必要と判断されると、家族の了解を得た上で訪問が開始されます。
さいごに
自宅を直接訪問できることは実際の子育ての様子が分かり、お母さんとのお話や表情などから、子育てのストレスや悩みをうかがい知ることができます。
また、お母さんにとって、地域の中に顔見知りの相談できる人がいることは、心強い味方になると思います。
およそ10%のお母さんが産後うつ病にかかると言われています。核家族によって、自分の親から離れたところで妊娠・出産することもまれではありません。
さらに、様々な事情によって、親を頼よることができないお母さんもいます。妊娠・出産・子育てを家庭のみに任せるのではなく、住んでいる地域で様々な人が支援し、孤立を防ぐことが大切だと思います。
ではまた。 Byばぁばみちこ