ひとりひとりが輝ける時間を~1年に1度のスペシャルデイ~ ときわ呉 療育支援課 矢野裕子

 ときわ呉が開設し、10年が経過する時、丸三年間のコロナによる制限された生活も重なって、職員の中でいろいろな想いが生まれた。

「こんなことができたらいいな」「ご利用者様はこんなことがしたいだろうな」「誕生日の日はその人の為だけの時間をつくれるといいな」「1年に1日『特別』な時間をつくりたい」こういった想いが集まり、2023年度スペシャルデイを始めた。

 

 スペシャルデイという名前は、第33回重症心身障害療育学会学術集会にてベルデさかいの報告から、引用させていただいた。そして年に1回一人一人が輝ける時間を企画する「スペシャルデイ係」を発足し、2023年4月から、『普段とは異なる特別感』を求めて、行なっている。

 

 基本的には誕生日の月で予定し、内容はご利用者様の考えた好きなこと・やりたいことで計画している。

 現在54名の入所者がいるときわ呉では、この企画実行を年間で考えても、1週間に1人はスペシャルデイを行なうこととなる。時間の確保や職員間での情報共有・企画実行の難しさは、行なっていく中で見えてくる。しかし、少しずつでも想いが形になるように、日々奮闘中である。

 

 これまでの2か月間で行なったスペシャルデイの内容は、様々であった。

 ご家族に来所してもらい、家族室でゆっくり過ごす方。お母さんにお弁当を作って来てもらい、お昼ご飯を一緒に食べる方。同年代の職員と一緒にメイクをして、買い物に出かける方。

 ご家族に来所してもらい、家族室で一緒にゲームをする方。職員と一緒にいろんなゲームをする方。などなど・・。

 どの方も、どの企画でも、普段の生活では見られない表情や穏やかな空気が漂っていた。

 ご家族にお願いしたことも、どの家族も快く受け入れてくださり、お弁当作りをお願いしたお母様には「わが子に作れてうれしいです」という声もいただいた。

 コロナの制限により、特別な日を求めながらも、当たり前の日常を願っている私たちがいて、ご家族とゆっくり過ごすことで特別感とするケースも多々ある。また、ご家族と過ごされる時間を目の当たりにし、ご家族の思いから、多くの学びを受けている。

 まだまだ始めたばかりの「スペシャルデイ」であるが、ひとりひとりの存在を大事に、ささやかな日常の中で特別な時間を作れるように努力していきたい。