【連載ばぁばみちこコラム】第七十回 子どもの発達支援と障害福祉サービス 広島市民病院 総合周産期母子医療センター 元センター長 林谷 道子

 子どもの発育発達のベースには個人差があり、特に小さく生まれた赤ちゃんは成長がゆっくりです。子どもの発育や発達に心配を持っているお母さんも多く、そんな時、日常の子育ての様々な心配事を相談できる地域子育て支援センターの保健師さんや保育士さんなど身近なスタッフは力強い存在です。

子どもの遊びと子どもの人間関係の成長=子どもは遊びを通じて育っていく

 子どもの発達にとって遊びはとても大切です。

 1歳に満たない時期は親などの大人と遊ぶ時期で、「いないいないばあ」など、遊びながら全身でコミュニケーションをとっています。

 1歳くらいになると友達の存在を意識し始めます。お友達が持っているおもちゃが気になったりしますが、あくまで遊びの中心は「自分の興味があるもの」で、友達と一緒に遊ぶことはほとんどありません。

 2歳くらいになると、同じ年頃の子どもに関心を示し始め、一緒に同じことをして遊ぶようになりますが、友達との上手なやりとりはまだ難しく、トラブルが多い時期です。

 3歳くらいになると、他の子と楽しさを共感できるようになり、「ごっこ遊び」が始まりますが、自分の気持ちをコントロールしたり、友だちの思いをくみ取ったりすることは、まだ難しい時期です。

 4歳くらいになると、自分の思いを言葉で伝えられるようになり、「貸して」「いいよ」などのおもちゃの貸し借りや遊びの順番を待つなど、社会的なルールを覚えるようになります。

 

 

 子ども同士は、最初は一緒に遊んでいるように見えなくても、同じ空間に一緒にいることが大切で、周りの刺激があることによってその子の遊びが豊かになっていきます。そして、その遊びから発展して子ども同士の関わりが生まれ、たとえトラブルが起こっても、その中で育っていきます。

 小さい頃にトラブルを経験することは、他人のことを思う心を少しずつ育てていくと思います。

 

オープンスペース=子どもと保護者の集いの場

 

 オープンスペースとは、乳幼児とその保護者が気軽に集まって遊べる場所です。お母さん同士が、育児に関する同じ悩みを語り合ったり、専任のスタッフに子育てに関する相談をしたりなど、様々な情報交換ができます。また、子ども達が同じ年齢の子どもと一緒にいることによって、遊びを通じた子ども同士の関わりがうまれることが期待されます。

 オープンスペースには広島市の各区にある常設のオープンスペース以外に、地域の有志が児童館や公民館、集会所などの身近な場所で、定期的に開催しているる地域のオープンスペース、民間団体が運営する公募型常設オープンスペースがあります。

各区の常設オープンスペース

 広島市が設置したオープンスペースで、各区に1か所あります。市を含む地域の関係者で構成された運営協議会によって運営されています。子育て中のご両親が気軽に立ち寄ることができ、子どもが喜ぶおもちゃや絵本があります。また、保健師や保育士などの専任のスタッフに子育ての相談をすることができ、定期的に保育士などによる子育てに関する講座やイベントが行われています。

 

 

 オープンスペースに関する詳しい情報は広島市ホームページで検索できます。トップページから「オープンスペース(乳幼児と保護者が集える場)」で検索してくださいね。

オンライン「おしゃべり広場」

 自宅で過ごす乳幼児とその保護者が、自宅に居ながらオンライン上で気軽に交流ができる”オンライン「おしゃべり広場」” が各常設のオープンスペースで開設されています。

 特に新型コロナウイルス感染症が拡大し、外出が自粛される中で、ストレスを抱えて育児をしているご両親(特にお母さん)が増えています。子育ての中で感じるストレスを発散し、少しでも安心感を持てるようにと開設されました。

 

 

 市内の各常設のオープンスペースで、オンライン会議システム「Zoom」を活用し、概ね3歳未満の乳幼児とその保護者を対象に行っています。

 保育士などオープンスペースのアドバイザーが参加し、必要に応じて、子育てに関する不安や悩みに対して相談に乗ったり、子育てに関する情報提供を行ったりしています。メールでの申し込みを行い、手続きが完了したら、当日開催メールのURLをクリックして、おしゃべり広場に参加できます。

 詳しくは住んでいらっしゃる地域子育て支援センターのホームページをご覧ください。

子育てサークル

 子育て中のお母さん達が、公民館、児童館、集会所を借りて行っているサークル活動です。

 各区にたくさんの子育てサークルができており、自主的に活動内容や運営方法が決められています。0歳児(サークルによっては1歳児)~未就学児を対象に、親子あそびやリトミックを中心に60分~90分程度の活動を行っています。各区の地域子育て支援センターに問いあわせると詳細が分かります。

 

児童発達支援

 発達に障害がある、またはその可能性がある子ども達は、一般の保育園や幼稚園での十分な支援が難しいケースがたくさんあります。そういった発達に問題を抱えている未就学児のための通所支援の一つが「児童発達支援」です。

 児童発達支援は日常生活で困り事がある子どもたちの支援を目的とした制度で、6歳までの未就学期に利用することができ、子どもの特性に合った遊びや学習を支援することによって、就学に必要な自立支援や機能訓練を行います。

 「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」に分かれており、医療型は上下肢または体幹の機能の障害のある児童に対する児童発達支援及びリハビリなどを行います。

 また、保育所や小学校等など児童が集団生活を営む施設等に通う障害児には、その施設を訪問し支援などを行う保育所等訪問支援や自宅を訪問して行う居宅訪問支援があります。

 利用を希望する場合には、お住まいの市区町村の障害福祉課に申請します。また、利用料は世帯の所得に応じた負担があります。

 

 

 

 

発達支援と「受給者証」 発達支援には必ずしも療育手帳はいらない!!

 

 児童発達支援は「発達に課題がある」お子さんであれば、市町村の障害福祉課などに申請し「受給者証」を発行してもらうことによって、「療育手帳」がなくても利用ができます。

 通所受給者証は、児童福祉法による障害児を対象としたサービスを利用するための証書です。

 厚生労働省は、通所の給付を決める時には、医学的診断名や障害者手帳を有することは必ずしも必要ではなく、療育を受けなければ福祉を損なうおそれのある児童を含むものとするとしています。取得するには市町村の障害福祉課などで発達支援サービスの内容や計画の説明を聞き、申請手続きを行います。その後、それぞれの子どもの課題に応じた利用計画の案を作成し、審査を受け受給者証の交付が決定されます。計画書案は相談支援員と一緒に作ってもいいしお母さんが作ることもできます。

 受給者証には、こどもの名前や住所の他、発達支援サービスなどを利用できる日数(支給量)や、月額の利用料の上限額(上限負担額)が記載されています。

 「受給者証」は1年毎の更新制です。また、小学校に入学すると、サービスが「児童発達支援」から「放課後等デイサービス」に変わるので受給者証の更新が必要になります。

 

 

 

障害児相談支援と指定事業者

 「障害児相談支援」は児童福祉法第六条に定められており、障害児が通所、訪問サービスを利用する場合のサービスで、支援利用援助継続支援利用援助があります。これらの相談は市町村が指定する指定障害児相談支援事業者が行っています。

障害児支援利用援助

 障害児が通所、訪問サービス等を受ける場合、市町村からの受給者証障害者手帳が必要で、それを手助けするための援助です。

 受給者証をもらうためには、障害児の心身の状況や環境、希望を聞いた上で、まず、「障害児支援利用計画案」を作成し、利用する事業者等との連絡調整の上、最終的に支援の種類や内容を決めて「障害児支援利用計画」を作成します。

継続障害児支援利用援助

 継続して障害児通所支援を適切に利用できるよう、支援計画を見直しや変更を行う援助です。

 

子どもの障害福祉サービス

 

 児童福祉法に基づくサービスは、それまで障害の種別で分かれていた施設体系が、通所・入所という利用形態別に変更、一元化され、通所系サービスは市町村が、入所系サービス道府県が担っています。また、入所施設は福祉型と医療型に分けられています。

 サービスの利用援助など、支援の内容については居住地区の厚生部福祉課障害福祉係に相談することができます。

 

さいごに

 成長に伴って「言葉が遅い」「お友達と遊べない」「こだわりが強い」など、発達に不安を感じることがあります。

 そんな時お母さんをサポートし、お子さんの発達を促す施設として児童発達支援や放課後デイサービスなどの「児童発達支援事業所」があります。

 利用可能なサービスについては、地域子育て支援センターや保健センターの保健師などからアドバイスがもらえます。

 また、お家からオープンスペースなどに出かけ、お子さんの様子を直接見ていただいて相談するのもいいかもしれません。

 お母さん、ひとりで抱え込まないでね。

ではまた。Byばぁばみちこ