脳性麻痺とは?
脳性麻痺とは? 〜身体が動かしにくいだけだと思っていませんか〜
脳性麻痺(cerebral palsy)について,皆さんはどのような認識をお持ちでしょうか?
「脳に問題があって,身体が動かしにくい」という認識のみの方が多いかと思います.脳性麻痺とインターネットで調べても,多くは身体の動かしにくさのみに焦点が当てられています.
その元になっている脳性麻痺の定義は1968年に厚生省脳性麻痺研究班会議で定めらました.この定義では脳性麻痺を「運動と姿勢の異常」としており,「脳性麻痺は身体が動かしにくい」という認識につながっているのではないでしょうか?
近年,脳性麻痺の研究が進み,脳性麻痺が運動や姿勢の異常だけでなく,さまざまな障害を併せ持っていることが明らかになりました.そこで,厚生省の定義が定められてから40年近く経った2004年に世界中の研究者が集まって脳性麻痺の新たな定義が定められました.その定義では,身体の動かしにくさだけでなく,感覚やコミュニケーションなどにも困難さを抱えることについて言及している点が大きな特徴です.
今後,脳性麻痺の方たちと接する機会があれば,改めて感覚やコミュニケーションにも困難さを抱えることに着目していただけたらと思います.
厚生省脳性麻痺研究班会議1)(1968)
「脳性麻痺とは受胎から新生児期(生後4週間以内)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく,永続的なしかし変化しうる運動および姿勢の異常である.その症状は満2歳までに発現する.進行性疾患や一過性運動障害または将来正常化するであろうと思われる運動発達遅延は除外する」
Baxらの定義2)(2005)
「脳性麻痺の言葉の意味するところは,運動と姿勢の発達の異常の1つの集まりを説明するものであり,活動の制限を引き起こすが,それは発生・発達しつつある胎児または乳児の脳のなかで起こった非進行性の障害に起因すると考えられる.脳性麻痺の運動障害には,感覚,認知,コミュニケーション,認識,それと/または行動,さらに/または発作性疾患が付け加わる」
参考文献
1) 日本リハビリテーション医学会 監修:日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会,脳性麻痺リハビリテーションガイドライン策定委員会 編:脳性麻痺リハビリテーションガイドライン,医学書院,2009
2) Bax M,Goldstein M,Rosenbaum P,et al:Proposed definition and classification of cerebral palsy.Dev Med Child Neurol 47:571-576,2005