【連載ばぁばみちこコラム】第七十六回 乳幼児健康診査 -3歳児健診①-
3歳は自我が芽生え、親への依存から抜け出して社会性を身につけ始める時期です。自分の名前や年齢を答えることができ、食事、排泄、着替えなどの基本的な生活習慣が身についてきます。
また、粗大運動(走る、跳ぶなど)や微細運動(積み木で塔を作る、まねて丸を書くなど)が発達するのに伴い、それまで目立たなかった軽度の脳性麻痺、精神や運動発達の遅れ、視覚や聴覚の異常などが分かるようになってくる時期でもあります。
3歳児健診
3歳児健診は母子保健法第12条に定められており、「満3歳を超えて満4歳に達しない幼児」を対象として、市町村が保健センターなどで集団健診として行っています。
3歳児は保育園や幼稚園などで友だちや先生など家族以外の人と接する機会が増え、言葉でのコミュニケーションができるようになる時期です。
身体面の多くの病気はそれまでの健診でほとんど診断されていますので、3歳児健診では子どもの社会性など精神発達が順調か、お母さんに育児の不安がないかを診ることが主な目的です。
3歳児健診の目的
- それまでの健診で疑われた中等度以上の精神運動発達の問題点と今後の課題を確認します。
- それまで目立たなかった軽度の精神遅滞や脳性麻痺を見つけ早期の療育を開始します。
- 視覚や聴覚の異常を見つけ専門医による治療に結びつけます。
- 自閉スペクトラム症や注意欠如多動症など社会性の障害につながる可能性のある子ども達を早期の支援につなげていきます。
- 接種可能な予防接種が終わっているかを確認します。
小学校就学までの健診(5歳児健診の必要性)
3歳児健診は幼児期最後の健診で、それ以降小学校入学前の就学前健診まで健診はありません。
就学前の子ども達の中には幼稚園などの集団生活の中で、友達と遊べない、癇癪、こだわり、落ち着きのなさなど行動やコミュニケーションの問題などを抱えている子どもがいます。
5歳児健診は、5歳の誕生日を迎えた子どもが対象で、幼稚園年中の間または年長の前半に受けることができます。5歳児健診のタイミングで発達上の問題点が分かれば、就学までの1年間に療育などを受けることができます。子ども家庭庁は令和5年度の補助事業として5歳児健診を勧めており、自治体によっては5歳児健診を行っているところもあります。
広島市では発達が気になるお子さんについては各区の保健センターで、5歳児発達相談を行っています。「広島市公式HP 5歳児発達相談」で検索してください。
チェックリストがあります。心配されているご両親は居住所の保健センター厚生部地域支えあい課に問いあわせると、情報が得られます。
5歳児発達相談は、診断をする場ではありませんが、子どもの特性や子どもに合った関わり方について、専門の心理相談員からアドバイスが受けることができます。
3歳児健診での身体発育
3歳の子どもの体格は、身長90cm、体重15kgくらいが標準です。測定値を母子手帳にある男女別の発育曲線にプロットし、身長・体重・頭囲が成長曲線に沿って増えていて、3~97パーセンタイルの範囲内にあれば問題がないと言えます。身長と体重のバランスは母子手帳に載っている身長体重曲線から肥満度を判定し±15%が正常範囲です。
3歳児健診の計測値の中で、最も注意する必要があるのは身長の伸びです。今までの計測値と比較して、発育曲線から離れていくようであれば、成長ホルモン分泌不全の疑いがあります。
また、SGAと呼ばれる産まれた時の身長や体重が、在胎週数に比べて小さく生まれた赤ちゃん(第67回コラムを参照ください)も注意が必要です。
SGAの赤ちゃんの90%は生後2〜3歳で標準的な身長に追いつきますが、約10%は追いつくことができません。暦年齢が3歳以上になった時点で一定の基準を満たせば成長ホルモンの注射による治療を受けることができます。
3歳児の運動発達=粗大運動と手指の微細運動の確認
粗大運動
デンバー発達判定法の運動発達の達成率の月齢を見ると、3歳児健診を受ける生後36カ月以上48カ月未満の90%の子どもは、大人と同じように手と足を交互に振って歩くことができます。
また、走ったり飛び跳ねたり、両足でジャンプすることができ、足を交互に出して階段を上がることができます。
歩行については、歩く様子が不安定で動揺があるなど、歩き方にも注意が必要です。
微細運動
3歳になると手指を使う細かな動きができるようになります。3歳では鉛筆で〇を書いたり積み木を8個積み上げたりすることができ、日常生活では箸が使えるようになり、大きなボタンであればかけることができます。微細運動の遅れは、脳性麻痺などによる運動機能の問題だけでなく、知的障害などの協調運動機能の遅れでもみられます。
3歳児の精神発達=知的発達と社会性・行動の発達
知的発達=発語と言葉の理解
知的発達は言葉をどの程度しゃべれるかと、言葉をどの程度理解しているかで判断できます。
3歳では自分の名前と年齢を答えることができ、数個の意味のある言葉や二語文を話すことができます。4歳近くなると、はっきり良く分かるように話すことができるようになります。
デンバー発達判定法の言語発達の達成率の月齢を見ると、3歳児健診を受ける90%の子どもは物に名前があることを理解しており、絵を見て動物を指さしたり、自分の体の部位の名前を答えたり指さしたりできます。また、大小、長短、色などを答えることができます。
3歳で二語文が話せない、スムーズに発音できない場合、発語の遅れがあると判断されます。
また、3歳前半で大小が理解できない場合や、3歳後半で長短などが理解できない、4色のすべてが答えられない場合には言語理解の遅れが疑われます。
話すことはできても、視線が合わない、会話が成り立たないなどの社会性の発達に問題がある場合には自閉スペクトラム症を疑う必要があります。
社会性・行動の発達
デンバー発達判定法の運動発達の達成率の月齢を見ると3歳児の子どもの90%は上着などを着たり脱いだり、靴を履く、手を洗う、歯を磨くなどの生活習慣が身についていることが分かります。
また、友達の名前を言ったり、簡単なゲームや「ごっこあそび」をしたりするなど、社会性が少しずつ発達してきていることが分かります。
簡単な会話ややり取りが成立しない、癇癪やこだわりが強い。簡単な指示に従えない、じっとしていないなど社会性に問題があるような場合には、自閉スペクトラム症が疑われ、療育を検討する必要があります。
さいごに
幼い頃から保育園などで、集団生活を送っているお子さんもいらっしゃいますが、3歳になって初めて幼稚園などの集団生活デビューが始まるお子さんもあります。
子どもにとっても、お母さんにとっても、初めて直面することがたくさんあり、集団生活の中でのお子さんの様子や他の子どもとのちょっとした違いに不安を打たれることもあると思います。
次回のコラムでは、幼児期の子育ての中での心配事や子どもの気になる癖などについてお話をさせてください。
ではまた。 Byばぁばみちこ