【連載 ばぁばみちこコラム】第二回 乳幼児期に問題となる感染症とワクチン接種の重要性 (大切な子どもの命を守るために)
赤ちゃんは、出生後多くの細菌やウイルスに接します。ほとんどの感染症は軽症で、それにより免疫を獲得していきますが、感染症によって亡くなったり、合併症のため脳に重い障害を持つこともあります。私達大人はこれらの危険から子どもを守る必要があります。
赤ちゃんはお母さんから免疫をもらって生まれてくる
赤ちゃんは胎盤や母乳を通じてもらった免疫によって守られていますが、生後3か月頃から免疫は徐々になくなり、外出する機会が増えるとさまざまな感染症にかかるリスクが高まってきます。
赤ちゃんの免疫とワクチン
赤ちゃんは小さいほど、病気にかかると重症化しやすいため、重症化しやすく重大な合併症を起こす感染症は予防が大切です。ワクチン接種は感染症の最も有効な予防手段で、ワクチンで防げる感染症をVPD(Vaccine Preventable Disease)と呼んでいます。
乳幼児期にかかりやすい主な感染症
子どもがかかりやすい感染症にはワクチンで予防ができるものとできないものがあります。ワクチン接種は感染症にかかることを予防できる以外に、かかってもごく軽い症状で済むことが期待されます。特に髄膜炎や脳炎・脳症など後遺症を残す感染症は、ワクチン接種のスケジュールに沿って、確実な接種を行うことが大切です。
乳幼児期に問題となる重篤な細菌感染症(髄膜炎や敗血症)
―原因は肺炎球菌とインフルエンザ菌(b型)が大半を占める―
外来で発熱を認め、上気道炎や中耳炎など一見軽症で元気な子どもの血液から細菌が見つかることがあります。これが潜在性菌血症で、原因菌として多いのが肺炎球菌とインフルエンザ菌です。
肺炎球菌は小児の上気道に常在しています。保菌していても感染症を発症せず、多くは症状がありませんが、髄膜炎や肺炎などを引き起こす可能性があります。
インフルエンザ菌も上気道に常在していますが、気道感染症を起こすことは少なく、直接血液中に侵入して感染症を起こします。最も多いのが細菌性髄膜炎で、肺炎球菌の約5倍にもなります。その他、敗血症・喉頭蓋炎・肺炎なども引き起こします。
細菌性髄膜炎の起炎菌と年齢分布を見ると、インフルエンザ菌と肺炎球菌で約80%を占め、5歳以下の児での発症が大半です(図1)。生後2か月から行う2つの細菌に対する確実なワクチン接種が極めて重要です。
保育園などで集団生活を開始すると、ほとんどの園児が肺炎球菌とb型を含むインフルエンザ菌を保菌します。入園からわずか1~2カ月後には80.0%の児が肺炎球菌とインフルエンザ菌をともに保菌し、1年を通して保菌状態がほとんどの乳児で持続しています(図2)。集団生活を送る乳児では、特にこの二つの細菌による重篤な感染症のリスクが高まるため、入園前にワクチン接種を済ませておくことが重要です。
脳炎・脳症を起こす感染症
脳にある血液脳関門というバリアは、血液中のウイルスや細菌が脳内に入り込むのを防いでいます。脳の機能が未熟な赤ちゃんや免疫力が弱っている場合には、このバリアが十分働かないため、脳炎や脳症になるリスクがあります。
ワクチンで予防できる脳炎・脳症の中で、最も多いのはインフルエンザウイルス、次いでロタウイルスです。
インフルエンザ脳症は主に 5 歳以下の乳幼児に発症し、大半は発熱してから48時間以内に起こります。
ロタウイルス脳症を引き起こすロタウイルス胃腸炎は、8割が生後2歳未満(2割が6カ月未満)にみられ、初感染が最も重症です。ロタウイルス脳症は予後が悪く、痙攣が難治性で多臓器不全を起こします。ロタウイルス胃腸炎では便中に大量のウイルス粒子が排出され、汚染物質(玩具など)の感染力は数日~数週間にも及び集団感染や家族内感染を引き起こします。
おわりに
小児の定期予防接種は、乳幼児期に接種が集中しワクチンの種類によって接種間隔や接種回数が異なっています。かかりつけの小児科医で確認して確実に受けることが大切です。
また、人ごみを避け、手洗いや外出後のうがいの励行、適切な湿度や温度環境を保つ(インフルエンザウイルスは高温多湿に弱いため、加湿器やぬれタオルなどで、湿度を50~60%程度に保つことも有効)などの感染拡大のための注意も重要です。
手洗いは流水でしっかり洗い流すことが重要ですが、ロタウイルスの殺菌にはアルコールや逆性石鹸はあまり効果がなく、殺菌には次亜塩素酸ナトリウムが有効です。また、調理器具、おもちゃ、衣類、タオル等は熱湯(85℃以上)で1分以上の加熱を行いましょう。
ではまた。 By ばぁばみちこ