【連載ばぁばみちこコラム】第八十四回 子どもと遊び(2)
子どもの遊びにはその年齢ごとに特徴があり、年齢に適した遊びがあります。その中でも「ごっこ遊び」は子どもにとっては特有な空想の世界で、創造性や社会性を育むことができます。
子どもはその中でコミュニケーションを通じて自分を理解してもらうことや、周りの人を理解し関係を築いていく方法や大切さを学んでいきます。
発達に適した年齢別の遊び
子どもの遊びは、体力や運動能力の向上だけでなく、自発性や社会性を育くみ、心身の健やかな成長に欠かせません。大切なことは、子どもの年齢に合わせた遊びを選ぶことです。
また、子どもの発達には個人差がありますので、年齢だけでなく、子どもの発達段階にあった遊びを工夫することが大切です。
①愛着形成期
愛着は3歳頃までに形成され、子どもは身近な相手に対して絆を深めていきます(第54回コラムを参照ください)。幼い頃にお母さんなどとの間で作られた愛着は、「表象(頭の中に描くイメージ)」として記憶され、大きくなった後の対人関係のひな型となり、人間関係を作っていく過程に影響を及ぼします。幼い子どもは感覚を通じて愛着を育みます。優しい声かけ、向き合い微笑むこと、手と手で触れ合うこと、抱きしめることが大切で、それによって相手の心を感じ、「自分が愛されている」という想いを持つことができます。
目をしっかりと見て「いないいないばあ」をしたり、「くすぐり遊び」をしたりなどのスキンシップは愛着形成に効果的です。
②感覚遊び期
感覚遊び(感触遊び)は、神経発達が著しい生後1ヶ月〜2歳頃に大切です。言葉を話す前から「おっぱいおいしいね」など、優しく赤ちゃんに話しかけながら聴覚を刺激します。「たかいたかい」などの平衡感覚等の感覚刺激も子どもは喜びます。
大きくなったら、「砂遊び」や「粘土遊び」などは手先の感覚を養うとともに自由に遊ぶことで想像力も育んでいくことができます。
子どもによっては、ちょっとした触覚刺激にも敏感に反応(触覚防衛反応)する場合があるので、苦手な感触は無理強いしないで、いろいろな感触のものを少しずつ触ることが大切です。
③模倣遊び(ごっこ遊び)期
1〜5歳頃の子どもにとってごっこ遊びは大切な遊びで、遊びを通して創造性や社会性を身に付けていきます。1〜2歳頃はおもちゃを耳に当てて{もしもし}と電話をするなど大人のまねをする見立て遊びの段階ですが、5歳頃になると、「おままごとごっこ」などのごっこ遊びに移っていきます。
④運動遊び期
子どもは3歳頃になると走ったり飛び跳ねたり、両足でジャンプすることができるようになります。活動が活発になると身体の成長や積極性を育む運動、特に外遊びが大切になってきます。
⑤構成遊び期
「構成遊び」は創造遊びとも呼ばれ、粘土やブロック、積み木などを使って、さまざまな形作りを楽しむ遊びで、集中力や手先の器用さが養われます。
「積み木遊び」や「ブロック遊び」は物を作り出すようになる3歳頃から想像力や図形の理解のためにも大切です。どんな形も作ることができる「粘土遊び」は手の感覚を養うことができます。
⑥ルール遊び期
ルール遊びは、「鬼ごっこ」「ボードゲーム」などの決まりがある遊びで、3〜4歳頃から取り組める様になっていきます。
年齢や発達に応じたルールのある遊びを取り入れることによって、ルールがなぜあるのかを納得することで、ルールの大切さに気づき、コミュニケーション能力や協調性が養われます。
⑦自律期
自律心は6〜10歳頃から芽生え、自分で考え行動するようになります。お友だちと遊ぶやりとりの中で、自分の要求ばかりは通らないことを学び、自己を制御し我慢をすることを覚え、遊びの結果を納得するようになり、様々な社会性をのばしていくことができます。
ごっこ遊びは空想の世界=子どもの創造性や社会性を育む
子どもが空想の物語の登場人物になりきったり、身近なものごとの真似をしたりするのが「ごっこ遊び」で、ルールが決まっているカードゲームや買ってきたおもちゃを使う遊びと違って、ごっこ遊びは自由度が高く、創造性や柔軟性、社会性が問われる大切な遊びです。
1歳頃は大人の真似ごとをする「再現遊び」、2歳頃にはぬいぐるみなどを相手に行う「世話遊び」、その後は、泥で作ったお団子を「どうぞ召し上がれ。」と本物の団子のように見立てて遊ぶ「見立て遊び」になります。そして、見立て遊びのイメージを友達と共有できるようになると、「ごっこ遊び」へと発展していきます。
限られたアイテムや友達を何に見立て、どういう物語を作っていくのか考えることによって脳の発達が促されます。また、小さな社会を遊びの中で体験することは、社会性の発達において重要な要素となります。使う物がシンプルであればあるほど、子どもはそこに自分なりの想像を働かせ、何かに見立てたり、何かのふりをしたりして遊ぶ必要があります。
遊びのなかのうそと現実の区別がつけられるようになるのは5、6歳とされています。
ごっこ遊びができるということは、その遊びが「うそであること」、「皆で一定のルールを作って遊んでいること」、「その中で自分が演じる役割を知っていること」など、他の子どもとスムーズに遊べる知能とコミュニケーション能力が発達していることを意味しています。
子どもはごっこ遊びによって、自分とは違う人になって空想の世界で遊ぶことができます。空想の世界で遊ぶことができるのは、人間の知的な営みなのです。
ごっこ遊びは、真似をするために対象を観察し記憶する力、自分の空想世界を作り上げていくための想像力や創造力、なりきるための表現力など、様々な能力が育ちます。
また、友達とやりとりしていく中でコミュニケーション能力が育ち、ルールに従うことで社会性を学んだりすることができます。
1〜3歳までの幼いころはお父さんお母さんも一緒にごっこ遊びを楽しんで下さい。普段のご両親と違った姿や声に子どもたちは大はしゃぎすると思います。
これからの子どもに大切な「非認知能力」
非認知能力は、学力テストや知能テストなどで点数化することができる「いわゆる頭の良さ(認知能力)」以外の能力のことです。
非認知能力はノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンによって提唱され「あきらめない力」「自己肯定力」「創造力」など人生を豊かにする能力とも言えます。
非認知能力には、①自分を高める力(意欲、向上心、自尊感情など)、②他者とつながる力(共感性、協調性、コミュニケーション力など)、③自分と向き合う力(自制心、忍耐力など)があります。
乳幼児期は非認知能力の基礎をつくる時期です。乳児期に育まれた両親との愛着関係は「心の安全基地」と作り、自分はかけがえのない存在であるという『自己肯定感』を生みます。そして自己肯定感は自分を高め自分に向き合う力、他者とつながる力につながります。
遊びで培われる非認知能力
遊び、特に「ごっこ遊び」の中で培われる非認知能力は、想像の世界で無から有を生み出せる「創造力」です。成長し想像の世界を否定するようになると、目に見えるものにしか価値を見出せなくなり新たに価値があるものを生み出すことが難しくなってきます。
創造の人物の気持ちに共感する力や主人公の問題を自分のこととして捉え複数の解決策を思いつく力、自分の気持ちを人に伝えるコミュニケーション能力などの非認知能力こそ、幼い子どもたちの中に育てるべき力です。
非認知能力を伸ばすためには?
①子どもが自分でやりたくてやる「遊び」の時間を大切にする
想像力を育む「ごっこ遊び」、創造力ややりぬく力を育む「工作」、また、友だちと一緒の遊びは協調性やコミュニケーション能力を育んでくれます。やりたい遊びを思いっきりさせましょう。
②安心して自由に遊べる環境をつくる
子どもが好きなことや得意なことなど、子どもの興味や関心を大切にできる環境が大切です。 親に愛されている、困ったときは助けてくれる、という安心感があるからこそ子どもはのびのびと学び、色々なことに挑戦することができます。
③子どもの自己選択・自己決定を尊重する(やりたいことができる)
自分で考えて選んで決めたという経験が自己肯定感を育てます。大人にとっては無駄で意味のないように見えることでも否定されず認めてもらうが喜びとやる気につながります。
④最後までやり遂げたら結果だけでなく共感しプロセスを認める
やり抜く力は結果だけでのみ決まるのではなく、たとえ失敗してもどう取り組んだかというプロセスもしっかり「認める」ことで育ちます。最後までやり遂げることの楽しさや達成感を感じることが、あきらめない力や粘り強さのもとになります。
⑤多様な人と関わる機会をつくる
非認知能力は人との関わりの中で育まれるものが多く、様々な人と関わる機会をできるだけ多く作り、時に喧嘩の経験も大切です。
非認知能力を伸ばすために避けるべきこと!
①大人の都合を押し付けすぎる
大人の都合を押し付けると、自己肯定感や意欲が育ちにくくなります。子どもが意欲を持ったことはなるべく行えるようにすることが大切です。
②子どもの失敗を感情的に叱る
結果だけではなく、経過を一緒に振り返って、よかったところは「がんばってたね。」と認めることが、また挑戦しようという気持ちにつながります。
③子どもが失敗しないように先回りする
子どもが自分で失敗を経験させることで、やり直す方法を学び回復力が伸びていきます。
④他の子どもや兄弟と比較したり、子どもの人格を否定したりする
遊び、特に「ごっこ遊び」の中で培われる非認知能力は、想像の世界で無から有を生み出せる「創造力」です。大人になって、想像の世界を否定するようになると、創造性は急速に萎縮し、目に見えるものにしか価値を見出せなくなり、新たな価値あるものを生み出すことが難しくなってきます。
創造の人物の気持ちに共感する力や、主人公の課題を自分のこととして捉え、複数の問題解決策を思いつく力、そして自分の気持ちや意見を人に伝えるコミュニケーション能力などの非認知能力こそ、幼い子どもたちの中に育てるべき力です。非認知能力は子どもの人生を豊かで幸せにしてくれる財産です。
子どもの遊びに対する大人の関わり方
大人が必要以上に干渉する事は子どもの自発性を妨げてしまうため、最も大切なことは子どもの意思を尊重して自由に好きな遊びをさせることです。
遊びの中での試行錯誤や失敗も発育には欠かせない経験です。子どもは遊びに夢中になると危険に気がつかないことがありますので、周りに怪我をしそうな危険なものはないか安全に気をつけましょう。また、年齢の違う子どもと遊ぶことも大切です。自分より年上の子どもの真似をして新しいことに挑戦したり、年下の子どもへの責任感や我慢を覚えたりします。子どもが幼い場合には大人が一緒に楽しく遊び、遊び終わったら、「元気に遊んだね」と声をかけ、遊びを褒めることも大切です。
友達とのケンカは大切な成長過程=子どもはケンカで社会性を学ぶ
子どもはケンカから色々なことを学びます。仲直りに大人の仲裁が必要な場合がありますが、ケンカの経験から子ども自身が解決策を考えることに意味があります。
①自己主張ができるようになる
遊びの中でお互いの主張がぶつかってケンカになります。2歳~7歳ごろまでは自分以外の物事を考えられない時期です。特に2歳~3、4歳では「あれが欲しい」と欲求を満たしたい気持ちが強く、ケンカというより欲求と欲求のぶつかり合いですが、その時期を過ぎると自分の要求を主張できるようになってきます。
②ケンカや仲直りから相手の立場にたって考えられるようになる
ケンカをすると叩かれると痛い、嫌な気持ちになるなど様々な感情を味わいます。それによって相手の立場にたって考えられるようになっていきます。
③自分の気持ちを素直に表現する経験
ケンカで嫌な思いをすることによって「どう言えばよかったのかな」など自分の気持ちを伝える必要性を感じ、少しずつその伝え方を学んでいきます。
④ケンカにならない方法やルールを考えられるようになる
ブランコの取り合いで「10まで数えたら交代する」など、どうしたらケンカにならないかを考えることで、お互いに解決できる力が身に付いていきます。また、「自分の欲求が通らないこともある」と自分の欲求に折り合いをつけることも経験できます。
⑤子ども同士の納得感が大切
子どもの成長で大切なのは、友達と尊重し合い学び合うことです。ケンカを通じてお互いに納得し合い、気持ちを分かり合えるようになります。
さいごに
ケンカすること、自分の思いどおりにならないこと。子どもは遊びの中の小さなつまずきから多くを学んでいきます。
お父さん、お母さんが子どものことを心配するのは自然なことですが、子どもの意思を大切にして自分がやりたい遊びをさせること。そして、ご両親にできることはほどよい見守りと子どもからのSOSに対する手助けです。
いつか子どもは巣立っていきます。その時に一人で生きていけるように、子どもは人生を豊かにする能力を遊びの中から探しています。
ではまた。 Byばぁばみちこ